ふじさきゆうやのブログ

陰キャオタクがとにかく好き勝手言いまくります。TwitterID→@KKEalter

カロリーメイトを薬だと思っていた。

 

先日、オタクといたときの話だ。

小腹が空き、何か食べるものが欲しくなっていたところ、オタクから「お前にやるわ」とカロリーメイトを恵んでもらった。

定番のチョコレート味だった。

 

カロリーメイトを最後に食べたのはいつだったろうか。

普段、“自分が食べるもの”の選択肢として入ることはないが、

確かに、カロリーメイトは小腹が空いたときにちょうどよさそうだ。いや、むしろ、小腹を満たす選択肢としてはこれ以上ないくらいのベストアンサーなのかもしれない。

 

 

 

 

 

袋を開けると、相も変わらず無骨な見た目のソレが現れた。

菓子として見たら決して映えない素朴な棒だが、その無骨さがカロリーメイトのいいところだ。

物思いに耽ったのち、クッキーのようなソレを口の中に放り込んだ。

 

程良く硬く、「食べている」という実感が湧く。

普通の菓子だと、味はあっても「食べている」という感覚はそこまでなく、あまり満足感がない。

かといって、おにぎりやサンドウィッチは「食べている」という満足感はあるものの、小腹が空いた時に食べるにはやや重たく、腹が満たされすぎてしまう。

カロリーメイトには菓子でもなく軽食でもない、両方のいいところどりをしたような、“ちょうどいい”感があった。

満腹中枢が確実に満たされてゆくこの感覚。しかし、必要以上に満たされすぎない。

 

味も一般的なチョコレートクッキーと違い、くどくなく、静かに主張するほんのりとした優しい甘さがあった。

 

俺はカロリーメイトを食って感動した。決して誇張ではなく、本当に感動した。

その場面に欲しかったもの、究極の理想に出会えたのだから。

俺はこの感動を我慢出来ず、

「いやお前、カロリーメイトあまりにもうますぎるだろ・・・」と漏らした。

 

俺の予想外の反応に、カロリーメイトをくれたオタクは「えっ?」と聞き返した。

その後、「そりゃあ、この手の健康食品にしてはうまいし俺も好きで食ってるけど、俺的には“うますぎる”とまではいかへんけどなw」と、極めて冷静な態度で返された。

 

 

 

彼奴はカロリーメイトに特別な感情を抱いていないような態度だった。

例えば、ハーゲンダッツだと普通のアイスとは違い、「ちょっとイイアイスだな」というリスペクトというか、高級感というか、特別な感情を誰もが抱くだろう。

俺は、カロリーメイトにもその手の“特別な感情”を皆がみんな抱くものだと思っていたので、オタクの冷静な態度には疑問があった。

 

 

しかし、よくよく考えてみれば、俺は昔からカロリーメイトに対してある種の憧れを抱いていた。ひょっとすると、カロリーメイトに対して特別な感情を抱いている俺のほうが珍しいのかも知れない。

人は幼少時代、取るに足らないものに憧憬を抱くことがあるだろう。

それが車や機械、習い事、食べ物、玩具など、色々あるだろうが、カロリーメイトは俺にとっての憧憬フードの一つだった。

 

俺がまだキッドの頃、父親と母親から「カロリーメイトは絶対に買うな」と固く禁じられていた。

今にして思えば、子供が常食するお菓子にしては値が張るので、俺に味を覚えさせないようにという意図があったのだろう。

実際、俺が記憶もないベビー時代の頃、やたらと刺身を欲しがったので試しに一枚食べさせてやったところ、めちゃくちゃに刺身を気に入ってしまいその場にある刺身を全部食べ尽くしたというエピソードを祖母から聞いたことがある。

父親と母親は、そんな俺が万が一にでもカロリーメイトを気に入ったら、カロリーメイト狂いになるに違いないと踏んで禁じたのだろう。

 

そういった牽制で「カロリーメイトは絶対に買うな」と言ったのだろうが、

俺は、「カロリーメイトは薬品だから買うな」という解釈でその言葉を受け取った。

パッケージの意味不明感、大塚製薬、コンビニだとリポビタンDの近くに置いてあることから、薬であることを全く疑わなかった。

(大塚製薬と大正製薬を混同していたうえに、ついでに言うと、リポビタンDも薬だと思っていた。そのためカロリーメイトも薬だと思っていたのだ。)

禁じられればますます興味が湧くのがキッズというもので、

直接購入したりはしなかったものの、カロリーメイトに対して“特別な感情”を抱くようになったのだった。

 

 

 

しかし、時間が経つに連れ、そういった特別な感情は徐々に小さくなっていき、小学校高学年になる頃にはカロリーメイトへの興味は消え失せていた。

俺は何事もなかったかのようにわんぱくな小僧として人生を謳歌していた。

 

 

中学二年生の夏だったか、ある日、クラスメイトの一人が熱で一日だけ休んだ。

大した症状ではないようで、翌日には普通に学校に来ていたが、そんな彼をよくある男子中学生のノリで「お前サボっただろw」「なんのゲームやってたん?w」と皆が茶化し始めた。

休んだ彼は、「いや、サボりじゃねーよw食欲ないからカロリーメイト食ってポカリ飲んでたわw」と軽くあしらったのだが、

その発言を聞いた俺は、「カロリーメイトを““食う””ってなんだ?」と思った。

「おい、待ってくれよ。カロリーメイトって“食う”ものなの?えっ?アレって食い物なの?」と尋ねた。

 

最初はボケだと思ったのか、その場にいた連中は笑っていたが、俺があまりにも真面目なトーンで回答をせがむものだから、

そのうちの一人が「おいおい、知らなかったのかよ。アレは食いモンだよ。クッキーみたいなやつで食べると口の中がめちゃくちゃパサパサするやつ。本当に食ったことない?」と教えてくれた。

その回答はあまりにも衝撃的だった。

俺はキッドの時代から、カロリーメイトは薬品だと信じて疑っていなかった。

それがまさか食べ物だったとは思いもしなかった。

俺は、忘れていたカロリーメイトへの憧れを思い出したのだった。

 

味、食感、匂い、次々に湧き出るカロリーメイトへの疑問。

一体カロリーメイトとは何なのか。

その日の昼休みは、他のクラスの仲のいい友達に、「お前カロリーメイト食ったことある?」と確認してまわった。

本当に頭がおかしい行動だが、それだけカロリーメイトに対する興味が強かった。

しかし、聞いてまわった割には期待する感想は得られなかったのだ。

「口がめちゃくちゃパサパサするよ」「あまりおいしくないよ」「おやつとしてわざわざ買うもんじゃないわ」といったちょっとネガティブな感想しかなかったからだ。

 

 

カロリーメイトへの興味が薄れたわけではないが、「まあアイツらがそういうなら買わなくてもいいか」とカロリーメイトを購入することはなかった。

中学生なので買おうと思えば十分買える値段なのだが、有り余るほど小遣いを貰っているわけでもないので、「いつか誰かしらに分けてもらって、タダで食えばいいか」という結論に至った。

 

しかし、目の前で誰かがカロリーメイトを食うというシチュエーションに遭遇せず、『カロリーメイトを分けてもらう』という企みは成功することなく中学時代は終わった。

結局、カロリーメイトを初めて食べたのは、高校二年生くらいの頃だった。祖母の家にたまたまあったものをもらった。

 

その時もやはり、チョコレート味だった。

 

初めてカロリーメイトを食べたときは「これが、この味が、“あの”カロリーメイトか」という気持ちでいっぱいで美味しかったかどうかは覚えていない。

ただ、衝撃と感動があったことだけは今でも覚えている。

 

 

 

 

さて、冒頭に戻り、久々にカロリーメイトを食べた俺は、

あまりのうまさに感動して、以来、まとめ買いし常食するようになったのだった。

抑圧されると大人になったときにソレが爆発するとはよく聞くが、本当にそうなんだなと身を以て体感した。

 

ちゃんちゃん♪(オチはありません)